砂漠の遺跡編 3
砂漠の遺跡編3です。
九龍妖魔学園紀―Fatal Flow―
ランドクルーザーの上位機種であるシグナスは、V型8気筒エンジンを搭載し、実に235馬力、43kgmのトルクを発生させる。
しかしそれでも、砂漠を6人乗りで走破するには、ややパワー不足だった。
「スピードが上がってない……」
アクセルを踏み込む御神は、思った以上に加速がかからない事に舌打ちした。
「やっぱり、俺がX5とかレンジローバーを持ってきた方がよかったなッ」
窓から身を乗り出す時瑛は、背後に向かって発砲していた。レリック・ドーンの追撃が来ていた。助手席側にいたのが功を奏した。MP5R.A.S.の排莢は右側。運転席側の席にいた場合、車内に薬莢が飛び散ることになる。
「悪うございましたねッ!」
同じくP90RRを乱射する葉月は、ギッと歯を鳴らした。P90の排莢は真下。運転席側の席でも射撃ができた。
「1千万なんて車、この十字砲火の中で走らせられるっての!?」
このシグナスは葉月の車だった。時瑛の言うBMW X5はV型8気筒エンジンを搭載し、360馬力51kgmのトルクを発生させるSAVだが、車両価格1200万。レンジローパーはラグジュアリー・オフローダーと呼ばれ、70年の登場以来、スーパープレミアムSUV。57.1kgmのトルクを発生させる396馬力のV型8気筒エンジンを搭載した1320万円。シグナスの値段は580万であるから、どちらも倍以上の値段がする。
「今更、車の事を言っても仕方がないでしょう!」
マリアに頭を下げさせられているレティシアが叫んだ。レティシアは遺跡内での化人との戦闘を想定した装備しか持ってきていないため、ソーコムピストルしか持っていない。車上からの射撃は現実的ではない。
「まぁ、パジェロなんかからは逃げ切れる! 真っ直ぐ走らせて!」
「はい!」
怒鳴る葉月に御神も怒鳴るように返事を返した。追っては二台だが、それを仕留められる気はしていなかった。元々、移動しているものに対して銃撃を加えても、命中率は著しく下がる。それをこちらも移動しながらやっているのだから、クリーンヒットする方がどうかしている。
「ああ、走らせろ! 馬力はこっちのが上だ!」
時瑛も怒鳴るように言った。パジェロの馬力は252。トルクは34.5kgmとなっている。シグナスと比べると、やや劣るスペックだ。
「斃せよ、大耶蘇!」
葉月はそう言ったが、時瑛は「バカ言え」と言い返した。
移動している相手の未来位置を予想して射撃する事――偏差射撃は超が付く高等技術だ。経験に裏打ちされた高度な技術が必要であり、人間が走っている程度でも百発百中させる事は難しい。時瑛でも完全に使いこなす事はできない。
「アムロやシャアでもなけりゃ、こんな中でできるか!」
バカにしたような時瑛の口調。
「乱射しろ、乱射! キラ・ヤマトみたいに!」
葉月もバカにして返した。
「俺はテロリストじゃねェ!」
時瑛と葉月の会話を聞きながら、マリアは溜息を吐く。
――逃げられますね、これは……。
バカに出来るというのは、余裕がある事の証なのだ。
逃げ切れると言った二人の言葉は本当だった。レリック・ドーンの追撃隊も、あまりに本体と離れすぎては、追撃部隊もこの広い砂漠では遭難すると判断したのだろう。
が、御神たちも危機的状況に瀕している事に変わりはない。GPSのお陰で《ロゼッタ協会》が用意していた次のキャンプ地には到着できたのだが――、
「先行していたパーティも襲われたようですね……」
窓の外に見えるキャンプ地の様子に、高坂が顔を曇らせていた。ここでも、まともに応戦した跡はない。
「経験の無さ……なのかな」
ステアリングを握る御神も、苦い顔。自分たちも、ヘタをしたらこうなっていたんだと思わされると、流石に直視できない。
――経験のなさと、企画の失敗だな。
軽く首を振った御神は、改めて《ロゼッタ協会》とレリック・ドーンの規模が同程度なのだと思い知らされていた。《ロゼッタ協会》が経験2年以内のハンターをエジプトに集めるとなれば、外部に向けて発信されている情報なのだから、レリック・ドーンに聞きつけられるのは当然だ。そしてレリック・ドーンも、《ロゼッタ協会》が何を掴んだのかを調べる事は出来る。
襲撃されるのも、当然だ。
「ちょっと停めてくれ」
居たたまれないとスピードを上げようとした御神に、時瑛がそう告げた。
「何か、ありました?」
御神が訊ねると、時瑛は車から降りた。
「使えるモノがあるかどうか、調べる」
「死人からモノを盗る気ですか!?」
あまりに当たり前すぎる口調で言った時瑛に、レティシアが素っ頓狂な声を出した。
「人聞きが悪いよ……。慌てて逃げたから、水も食料も、それに弾丸も武器も足りない。補給しないと、日干しになる」
清濁併せ呑めと時瑛は言っている。だがレティシアには、時瑛のしている事が火事場泥棒に映ってしまっていた。
「……」
御神もあまり乗り気でない顔をしていたのだが、意を決したように顔を上げると車を降りた。
「レティシアさんは、車の中にいて。僕が大耶蘇さんと一緒に行ってくるから」
時瑛とレティシアの橋渡しをしようというのだ。
が、御神にそう言われると、レティシアも「私も行きます」としか返せなかった。
「ならば私も行きます」
マリアも車を降りる。高坂も続こうとしたが、高坂は葉月が止めた。車の中に何人か残っていなければ、いざという時に車を発進させられないからだ。
「……ん、また妙なモノがあるな……」
ハンターが持ってきていたと思われる装備を仕分けしていく時瑛は、出てきた銃を持ち上げて苦笑いした。
M14SOCOM――。
レティシアが持っているソーコムピストル同様、アメリカ海軍特殊部隊で採用されている近接戦闘用ライフル。本式はグラスファイバー製のストックを付けているが、時瑛が見つけたモノは強度などの問題だろうか、ウッドストックにしている。
M14もソーコムピストル同様、シリアルナンバーから所有者が解る程の銃だ。ハンターはジェイドから入手したのだろうが、相変わらず、ジェイドの手腕はよく解らない。
「何ですの?」
レティシアが時瑛の肩越しに覗き込むと、この眼前にストックが突き出された。
「使う? 丁度、拳銃とセットになるし」
「……ちょっと重いですわ……」
レティシアは顔を顰めた。M14SOCOMは軽いグラスファイバー製ストックでも4キロを超える。ウッドストックにしているこれは、5キロ近い重量があった。レティシアと言えど、これを使っての戦闘は不向きだ。
「なら、こっちのがいいかな?」
そう言って差し出すのは、M14よりももっと長大なライフル。
PSG-1――。
セミオート・スナイパーライフルの最上機種であり、GSG9などの対テロ部隊で採用されている、信頼性の高いライフルだ。
「そっちはもっと重いですわ」
レティシアが唇を尖らせる。確かにPSG-1は8キロを超える重量を持つ。
が、時瑛は厳しい目をし、
「どっちかを持っていってもらう。拳銃じゃ、この砂漠で闘えないよ」
M14もアサルトライフル――今風に言うならばバトルライフルにカテゴライズされている銃だが、主な用途はスカウトスナイパーだ。特にM14はアフガン・イラク戦争のような、砂漠や山岳地帯での作戦に適した銃と言われている。PSG-1も、カウンタースナイプに使うには最良と言える。
正に今の状況にはうってつけなのだ。
「大耶蘇様は、まだ闘う気でいるのですか?」
そんな中で、マリアが口を挟んできた。
闘う気――《ロゼッタ協会》の本部があるカイロへ戻らないのかと言う。
確かに戻るのが本道だろう。補給が断たれたに等しい状況であり、また食料も水も満足な量がないのだ。6人で進むのは無謀だ。
しかし時瑛は首を横に振った。
「遺跡に向かう予定にしてるよ。これだけのことをしてるんだ。《ロゼッタ協会》も動くはずだから。ただ動くにしても、向こうが先行してる。マークする必要があると考えてるけど……」
そして時瑛が向けている視線の先にいるのは、御神だった。
「御神くん、どう思う?」
「え?」
顔を上げる御神は、きょとんとした表情をしていた。
「戻るか、それとも進むか、だよ」
「何で、僕に?」
御神が顔を顰めるのだが、時瑛は軽く肩を竦めた。
「君が最もリーダーに向いてるからだ」
「僕が? まさか……」
謙遜ではない。本当に御神はそう思っていた。
「僕よりも、大耶蘇さんの方が向いてます」
「……俺には闘う力はあると思う。だけど、誰かと一緒に生き残る力は、ないんだよ」
それが君にはあるだろうと時瑛。
「……」
御神はやや困った顔をマリアとレティシアに向けるのだが、二人とも時瑛と同じ意見だと言う。
「……」
口元に手を当てる御神は、責任の重さを感じていた。しかし時瑛の言い分に一理あるのは確かなのだ。
結論を出すまでには、時間はかからない。
「進もう」
事は大事になりかけている。レリック・ドーンが絡んできた以上、遺跡に眠っている秘宝の争奪戦となる。そして秘宝は、危険な遺物である可能性が非常に高くなった。
「御神さん……」
レティシアは何と言っていいのか解らないという顔をする。御神が背負った責任の重さは、レティシアにも解っていた。だが、かけるべき言葉が浮かばない。
「レティシア様、今は、必要なモノを集めましょう。《協会》からの援助が届くまでを、生き残らなければなりません」
マリアの言葉に、レティシアも頷く。そして時瑛が差し出していたPSG-1を取った。
「わたくし、狙撃はできますが、この場所での戦闘は向かないようですので」
「OK」
時瑛はM14SOCOMを肩に提げた。
「R.A.S.は、高坂さんに貸そう。それで何とか、凌げるだろう。あとは――」
時瑛は周囲に散らばっている物資を見遣る。
「必要なのは、水、食料、燃料ですね」
マリアが既に集めていた。6人分となると、かなりの量になる。使える車があればいいと思ったが、それは流石に残っていなかった。
時瑛はフッと笑い、
「弾薬もね」
「日没までは移動して、そこでキャンプを張ろう」
御神も手際よく物資を集め、ランドクルーザーシグナスのリアラダーに上った。
4に進む
2に戻る
九龍妖魔学園紀―Fatal Flow―
ランドクルーザーの上位機種であるシグナスは、V型8気筒エンジンを搭載し、実に235馬力、43kgmのトルクを発生させる。
しかしそれでも、砂漠を6人乗りで走破するには、ややパワー不足だった。
「スピードが上がってない……」
アクセルを踏み込む御神は、思った以上に加速がかからない事に舌打ちした。
「やっぱり、俺がX5とかレンジローバーを持ってきた方がよかったなッ」
窓から身を乗り出す時瑛は、背後に向かって発砲していた。レリック・ドーンの追撃が来ていた。助手席側にいたのが功を奏した。MP5R.A.S.の排莢は右側。運転席側の席にいた場合、車内に薬莢が飛び散ることになる。
「悪うございましたねッ!」
同じくP90RRを乱射する葉月は、ギッと歯を鳴らした。P90の排莢は真下。運転席側の席でも射撃ができた。
「1千万なんて車、この十字砲火の中で走らせられるっての!?」
このシグナスは葉月の車だった。時瑛の言うBMW X5はV型8気筒エンジンを搭載し、360馬力51kgmのトルクを発生させるSAVだが、車両価格1200万。レンジローパーはラグジュアリー・オフローダーと呼ばれ、70年の登場以来、スーパープレミアムSUV。57.1kgmのトルクを発生させる396馬力のV型8気筒エンジンを搭載した1320万円。シグナスの値段は580万であるから、どちらも倍以上の値段がする。
「今更、車の事を言っても仕方がないでしょう!」
マリアに頭を下げさせられているレティシアが叫んだ。レティシアは遺跡内での化人との戦闘を想定した装備しか持ってきていないため、ソーコムピストルしか持っていない。車上からの射撃は現実的ではない。
「まぁ、パジェロなんかからは逃げ切れる! 真っ直ぐ走らせて!」
「はい!」
怒鳴る葉月に御神も怒鳴るように返事を返した。追っては二台だが、それを仕留められる気はしていなかった。元々、移動しているものに対して銃撃を加えても、命中率は著しく下がる。それをこちらも移動しながらやっているのだから、クリーンヒットする方がどうかしている。
「ああ、走らせろ! 馬力はこっちのが上だ!」
時瑛も怒鳴るように言った。パジェロの馬力は252。トルクは34.5kgmとなっている。シグナスと比べると、やや劣るスペックだ。
「斃せよ、大耶蘇!」
葉月はそう言ったが、時瑛は「バカ言え」と言い返した。
移動している相手の未来位置を予想して射撃する事――偏差射撃は超が付く高等技術だ。経験に裏打ちされた高度な技術が必要であり、人間が走っている程度でも百発百中させる事は難しい。時瑛でも完全に使いこなす事はできない。
「アムロやシャアでもなけりゃ、こんな中でできるか!」
バカにしたような時瑛の口調。
「乱射しろ、乱射! キラ・ヤマトみたいに!」
葉月もバカにして返した。
「俺はテロリストじゃねェ!」
時瑛と葉月の会話を聞きながら、マリアは溜息を吐く。
――逃げられますね、これは……。
バカに出来るというのは、余裕がある事の証なのだ。
逃げ切れると言った二人の言葉は本当だった。レリック・ドーンの追撃隊も、あまりに本体と離れすぎては、追撃部隊もこの広い砂漠では遭難すると判断したのだろう。
が、御神たちも危機的状況に瀕している事に変わりはない。GPSのお陰で《ロゼッタ協会》が用意していた次のキャンプ地には到着できたのだが――、
「先行していたパーティも襲われたようですね……」
窓の外に見えるキャンプ地の様子に、高坂が顔を曇らせていた。ここでも、まともに応戦した跡はない。
「経験の無さ……なのかな」
ステアリングを握る御神も、苦い顔。自分たちも、ヘタをしたらこうなっていたんだと思わされると、流石に直視できない。
――経験のなさと、企画の失敗だな。
軽く首を振った御神は、改めて《ロゼッタ協会》とレリック・ドーンの規模が同程度なのだと思い知らされていた。《ロゼッタ協会》が経験2年以内のハンターをエジプトに集めるとなれば、外部に向けて発信されている情報なのだから、レリック・ドーンに聞きつけられるのは当然だ。そしてレリック・ドーンも、《ロゼッタ協会》が何を掴んだのかを調べる事は出来る。
襲撃されるのも、当然だ。
「ちょっと停めてくれ」
居たたまれないとスピードを上げようとした御神に、時瑛がそう告げた。
「何か、ありました?」
御神が訊ねると、時瑛は車から降りた。
「使えるモノがあるかどうか、調べる」
「死人からモノを盗る気ですか!?」
あまりに当たり前すぎる口調で言った時瑛に、レティシアが素っ頓狂な声を出した。
「人聞きが悪いよ……。慌てて逃げたから、水も食料も、それに弾丸も武器も足りない。補給しないと、日干しになる」
清濁併せ呑めと時瑛は言っている。だがレティシアには、時瑛のしている事が火事場泥棒に映ってしまっていた。
「……」
御神もあまり乗り気でない顔をしていたのだが、意を決したように顔を上げると車を降りた。
「レティシアさんは、車の中にいて。僕が大耶蘇さんと一緒に行ってくるから」
時瑛とレティシアの橋渡しをしようというのだ。
が、御神にそう言われると、レティシアも「私も行きます」としか返せなかった。
「ならば私も行きます」
マリアも車を降りる。高坂も続こうとしたが、高坂は葉月が止めた。車の中に何人か残っていなければ、いざという時に車を発進させられないからだ。
「……ん、また妙なモノがあるな……」
ハンターが持ってきていたと思われる装備を仕分けしていく時瑛は、出てきた銃を持ち上げて苦笑いした。
M14SOCOM――。
レティシアが持っているソーコムピストル同様、アメリカ海軍特殊部隊で採用されている近接戦闘用ライフル。本式はグラスファイバー製のストックを付けているが、時瑛が見つけたモノは強度などの問題だろうか、ウッドストックにしている。
M14もソーコムピストル同様、シリアルナンバーから所有者が解る程の銃だ。ハンターはジェイドから入手したのだろうが、相変わらず、ジェイドの手腕はよく解らない。
「何ですの?」
レティシアが時瑛の肩越しに覗き込むと、この眼前にストックが突き出された。
「使う? 丁度、拳銃とセットになるし」
「……ちょっと重いですわ……」
レティシアは顔を顰めた。M14SOCOMは軽いグラスファイバー製ストックでも4キロを超える。ウッドストックにしているこれは、5キロ近い重量があった。レティシアと言えど、これを使っての戦闘は不向きだ。
「なら、こっちのがいいかな?」
そう言って差し出すのは、M14よりももっと長大なライフル。
PSG-1――。
セミオート・スナイパーライフルの最上機種であり、GSG9などの対テロ部隊で採用されている、信頼性の高いライフルだ。
「そっちはもっと重いですわ」
レティシアが唇を尖らせる。確かにPSG-1は8キロを超える重量を持つ。
が、時瑛は厳しい目をし、
「どっちかを持っていってもらう。拳銃じゃ、この砂漠で闘えないよ」
M14もアサルトライフル――今風に言うならばバトルライフルにカテゴライズされている銃だが、主な用途はスカウトスナイパーだ。特にM14はアフガン・イラク戦争のような、砂漠や山岳地帯での作戦に適した銃と言われている。PSG-1も、カウンタースナイプに使うには最良と言える。
正に今の状況にはうってつけなのだ。
「大耶蘇様は、まだ闘う気でいるのですか?」
そんな中で、マリアが口を挟んできた。
闘う気――《ロゼッタ協会》の本部があるカイロへ戻らないのかと言う。
確かに戻るのが本道だろう。補給が断たれたに等しい状況であり、また食料も水も満足な量がないのだ。6人で進むのは無謀だ。
しかし時瑛は首を横に振った。
「遺跡に向かう予定にしてるよ。これだけのことをしてるんだ。《ロゼッタ協会》も動くはずだから。ただ動くにしても、向こうが先行してる。マークする必要があると考えてるけど……」
そして時瑛が向けている視線の先にいるのは、御神だった。
「御神くん、どう思う?」
「え?」
顔を上げる御神は、きょとんとした表情をしていた。
「戻るか、それとも進むか、だよ」
「何で、僕に?」
御神が顔を顰めるのだが、時瑛は軽く肩を竦めた。
「君が最もリーダーに向いてるからだ」
「僕が? まさか……」
謙遜ではない。本当に御神はそう思っていた。
「僕よりも、大耶蘇さんの方が向いてます」
「……俺には闘う力はあると思う。だけど、誰かと一緒に生き残る力は、ないんだよ」
それが君にはあるだろうと時瑛。
「……」
御神はやや困った顔をマリアとレティシアに向けるのだが、二人とも時瑛と同じ意見だと言う。
「……」
口元に手を当てる御神は、責任の重さを感じていた。しかし時瑛の言い分に一理あるのは確かなのだ。
結論を出すまでには、時間はかからない。
「進もう」
事は大事になりかけている。レリック・ドーンが絡んできた以上、遺跡に眠っている秘宝の争奪戦となる。そして秘宝は、危険な遺物である可能性が非常に高くなった。
「御神さん……」
レティシアは何と言っていいのか解らないという顔をする。御神が背負った責任の重さは、レティシアにも解っていた。だが、かけるべき言葉が浮かばない。
「レティシア様、今は、必要なモノを集めましょう。《協会》からの援助が届くまでを、生き残らなければなりません」
マリアの言葉に、レティシアも頷く。そして時瑛が差し出していたPSG-1を取った。
「わたくし、狙撃はできますが、この場所での戦闘は向かないようですので」
「OK」
時瑛はM14SOCOMを肩に提げた。
「R.A.S.は、高坂さんに貸そう。それで何とか、凌げるだろう。あとは――」
時瑛は周囲に散らばっている物資を見遣る。
「必要なのは、水、食料、燃料ですね」
マリアが既に集めていた。6人分となると、かなりの量になる。使える車があればいいと思ったが、それは流石に残っていなかった。
時瑛はフッと笑い、
「弾薬もね」
「日没までは移動して、そこでキャンプを張ろう」
御神も手際よく物資を集め、ランドクルーザーシグナスのリアラダーに上った。
4に進む
2に戻る
この記事へのコメント